①解散時のあれこれ
株式会社の場合、解散してもその解散を取り消して元の活動をすることができます。しかし、組合の場合は解散を取り消すことができません。歴史ある組合を本当に解散してよいのか、じっくり皆さんで検討してほしいと思います。
<ケース1>解散日の選択誤りで・・・
解説株式会社と組合では解散後の事業年度の考え方が異なります。組合の場合には今の事業年度末日を解散日にすると事務負担が少なくなる可能性があります。
<ケース2>解散総会の日と解散日がずれていて・・・
解説 解散日は上記のとおり一般的には事業年度末日とする事例が多くなっています。その解散を議決する解散総会が早すぎると問題になる可能性があります。
②財産の換価問題
組合を清算するには、原則として保有している財産をすべて現金化する必要があります。ここで問題になりやすいことは、資産を売却できない、売却価格で揉める、売却時に多額の税金が発生するなどです。
<ケース1>商工中金の株が売却できない・・・
解説 商工中金株式を持っている組合は多いと思います。この株を売却するには野村證券を通して売却する方法が一般的ですが、所有株が多い場合には残念ながら現在は思うように売却することができません。そこでもう一つの売却方法を検討します。
<ケース2>組合会館を理事長に売却したら・・・
解説 早く清算したいがビルも老朽化していてなかなか買い手が見つからない、というケースも多くあります。清算するために理事長が善意でビルを買い取ったところ、他の組合員から売却金額について安すぎないかとの意見が出てきました。
<ケース3>税金の還付申告は一年後・・・
解説 清算事業年度において財産を換価すると大きな売却損が計上されることがあります。その場合、税務署に「繰戻還付請求」を行い前年度に支払った税金を取り戻すことができます。ただし、組合の場合は事業年度を自由に変更できないため、結果として時間がかかり清算時期がずれこみ、組合員に返金する時期がかなり遅くなってしまうことがあります。
③清算期間中
総会で解散が決まり、解散届を提出すると基本的には中央会からも脱退することになります。すると、これまで事務支援をしてくれた方がいなくなり、不安に感じる組合も多くいます。
<ケース1>解散公告は官報に載せなければいけない・・・
解説 株式会社の場合、解散は官報に公告しなければいけません。ただし、組合の場合には官報に公告しなくても問題ない場合が多くあります。
<ケース2>解散事業年度、その後の清算事業年度の決算関係書類の提出は・・・
解説 組合の決算手続きの中でかなり大変な作業が、事業報告、事業計画などの決算関係書類の作成です。解散した場合、これらの作成は続けなければいけないのでしょうか
<ケース3>今まで無報酬で理事長をやっていたが・・・
解説 あまり動きがなかったため、長年無報酬でやってきたが、清算は色々動かなければいけない。その分の報酬を受け取ることは当然可能ですが、税務上は注意すべき点があります。
④残余財産の分配
組合財産の現金化が無事おわり、残りは分配だけ。ちょっと待ってください。ここにも落とし穴があります。組合は貸借対照表の純資産の部が株式会社と少し違います。ここを理解しないと思わぬ事故につながります。
解説 組合からの脱退事由として「組合員の解散」が法定されています。組合員が解散すると自動的に組合から脱退することになり、残余財産の分配に問題が生じる可能性があります。
<ケース2>出資金減少差益、加入金という科目があるのですが・・・
解説 出資金減少差益は、脱退した組合員へ持分を返還する際に何らかの理由により全額返還しなかった、その出資額と返還額の差額のことです。加入金は組合に加入する際に持分の調整金として組合員から払込を受けた金額のことです。これらを分配する際には税務上注意すべき点があります。
<ケース3>現在の組合員と出資金が一致しない
解説 出資金の不一致にはいくつかの類型があります。返さなければいけなかった出資金を返し忘れていたケース、組合員内で出資金を移動させていて組合に報告がないケース、資料がなく、一部の出資金の内訳がわからないケース、不明の理由がわからないケースなどです。それぞれに適した対応をする必要があります。
<ケース4>教育情報費用繰越金が多額に残っている・・・
解説 教育情報費用繰越金のように、組合以外では見ることのない勘定科目が純資産の部には多くあります。これらを分配する際には税務上注意すべき点があります。
< ケース5>清算してしまえば税務調査はもうないのか・・・
解説 残念ながら税務調査の可能性はあります。そして、その対応をするのは清算人です
⑤その他
組合の清算登記に係る登録免許税はかかるのか
清算組合の書類はすべて廃棄してしまってよいか