協同組合について

~当ページにおける組合は「中小企業等協同組合法」における事業協同組合(共済事業を実施していない)を想定しており、企業組合、協業組合、商工組合等は一部異なる取り扱いが規定されています。詳細は弊所にご連絡いただくか、最寄りの中小企業団体中央会にご相談ください。~

1.協同組合概要

(ア) 協同組合の特徴

①基準
1.相互扶助目的:組合は組合員の相互扶助を目的とするもの
2.加入・脱退自由:強制的に加入させられたり、脱退させられることはない
3.議決権・選挙権の平等:出資の多寡にかかわらず、一人一票
4.剰余金配当の基準:原則として、組合事業の利用に応じて分配する

②原則
1.直接奉仕の原則:組合は組合員の事業に対して直接的な奉仕を行う
2.政治的中立の原則:組合は政治団体ではなく、経済団体である

(イ) 株式会社との違い


株式会社事業協同組合
組織の目的ありあり
設立自由行政庁の認可
出資者資格自由地区内の中小事業者
出資限度自由(1社又は1人)25%まで
議決権1株1票1人1票
出資配当自由出資の10%が限度
利用分量配当なし事業利益の応分の還元
決算書

貸借対照表

損益計算書

株主資本等変動計算書

個別注記表

付属明細表

財産目録

貸借対照表

損益計算書

利益処分案(損失処理案)

注記表

(ウ)定款

内容ひな型条文ポイント
目的第1条協同組合のポイントである相互扶助を謳っています。
名称第2条「協同組合」を名称の前後につける必要があります。
地区第3条組合員の範囲を限定します。
事務所所在地第4条組合の事務所所在地(市町村)を記載します。組合の地区内である必要があります。
公告方法第5条組合の掲示板、官報、日刊新聞等を定めます。
規約第6条規約や規程の設定・変更廃止についての方法を定めます。
事業第7条組合の実施する事業を記載します。明確な表現で具体的に列挙する必要があります。
組合員資格第8条組合員になるための資格を記載します。どのような事業者を組合員にするのか表現の工夫が必要です。
加入第9条組合員資格のある者は、原則誰でも組合に加入できます。
加入者の出資払込第10条加入予定者は遅滞なく出資金を組合へ支払わなければいけません。
脱退者の持分払戻第14条持分の払戻基準は必ず定款に定めなければいけません。

(エ) 組合員の加入

①加入の自由
組合員の資格を有する者(組合の定款に記載されている地区内の資格を有する事業者)は、原則加入は自由です。組合は加入を拒んだり、現在の組合員より困難な条件を付すことはできません。

②例外的取扱い(加入拒否の正当な理由)
下記理由等があれば加入を拒否できる場合もあります。
・加入申込者の規模が大きく、組合の民主的運営が阻害される、又は独占禁止法が適用される恐れがある場合
・除名直後の加入申し込み、除名理由の原因が解消していない場合・加入申し込み前に組合の活動を妨害していた場合
・その者の加入により内部秩序が乱される又は、著しい信用低下を招く場合
・組合員の情報、技術等の経営資源の機密保持ができなくなる場合
・組合事業のキャパシティーから、組合員の増加により円滑な運営が不可能になる場合

③加入の種類

加入原始加入
持分承継加入
相続加入
譲受加入

(オ) 脱退時の処理

①脱退の方法
・自由脱退:組合員の意思で脱退、事業年度終わりに脱退となる
・法定脱退:組合員の意思にかかわらない脱退、事由が生じた時に脱退となる

②自由脱退
組合員は90日前までに予告し、事業年度の終わりにおいて脱退することができます。90日の予告期間は定款で1年まで延長することができます。

③法定脱退
・組合員の資格の喪失
・死亡(個人事業主)又は解散(法人事業主)
・除名

④除名 下記事由の組合員。除名するには総会特別議決が必要
・長期にわたり組合事業を利用しない場合
・組合に対する義務を怠った場合
・その他定款に定める事由に該当した場合

⑤持分の払戻

基準額組合財産の時価評価額
算定時期払戻事由の発生した事業年度末
払戻額定款の定めによる(一般的には3種類)
1.出資額限度
2.簿価限度額
3.全額払い戻し
払戻時期一般的には通常総会後
その他払戻請求権の時効は2年、法解釈では組合債権との相殺も可能

2.協同組合の会計

組合会計

(ア) 組合法上の決算書

①組合特有の決算書類
1.財産目録
財産目録は、組合が所有している資産、義務を負っている負債の内容を表示する書類です。財産目録に付すべき価額は、原則として取得原価基準となっています。時価情報については、財産目録の脚注に時価による組合正味財産の価額を表示します。
2.貸借対照表・損益計算書
基本的には株式会社で使用する決算書と同様ですが、一部勘定科目や区分が異なるため注意が必要です。

下記のPDFを参照

3.剰余金処分案又は損失処理案
株式会社では会社法移行時に株主資本等変動計算書に変更されましたが、組合決算書においては「剰余金処分案又は損失処理案」は作成が義務付けられています。一方で、会社法で求められている株主資本等変動計算書は作成する必要はありません。

(イ) 利益処分について

①準備金
当期純利益(繰越損失がある場合にはこれを控除した金額)の10分の1以上を利益準備金として積み立てなければいけません。会社法上は配当時のみ積み立てを強制されるため、注意が必要です。
利益準備金は、定款で定める額に達するまで(一般的には出資総額の2分の1)は積み立てなければならず、損失の填補以外は取り崩すことができません。

②教育情報費用繰越金
当期純利益(繰越損失がある場合にはこれを控除した金額)の20分の1以上を教育情報費用繰越金として繰り越さなければいけません。
教育情報費用繰越金は、組合員の事業に関する経営及び技術の向上または組合事業に関する知識の普及を図るための教育及び情報の提供に関する事業のために積み立てる繰越金であり、翌期以降の教育情報事業の実施に際し取崩し、収益に計上されることになります。

③積立金
定款で定める積立金として、特別積立金と言われるものがあります。特別積立金は、定款規定により当期純利益(繰越損失がある場合にはこれを控除した金額)の10分の1以上を積み立てる必要があります。特別積立金は原則として損失填補にのみ使用できますが、定款の規定により出資総額を超える部分については、総会議決により損失填補以外の目的にも使用することができます。
その他の任意積立金、例えば施設修繕積立金や周年記念事業積立金等は総会の議決により積立て、その積立目的に従い取り崩すことができます。

④配当金
1.出資配当
組合は配当可能限度額の範囲内であれば無制限に配当できる株式会社とは違い、出資額の10%を超えて配当することはできません。
それは、組合の目的は組合員の相互扶助であり、営利追求ではないことや、直接奉仕の原則から、組合員への奉仕は組合で獲得した利益を分配するという間接的な奉仕は、本来の組合の姿とは言えないからです。
2.事業利用分量配当
事業利用分量配当とは、組合の利益の源泉を組合員から徴収した手数料等が多額であったこと、と考え、利益を組合員が組合事業を利用した分量に応じて配当する(返還する)ものです。
事業利用分量配当金には、出資配当のような制限はなく、一定の範囲内であれば自由に行うことができます。
なお、事業利用分量配当は組合税務において非常に重要な役割を有しています。この処理を誤ると、組合に対しても、組合員に対しても不利な影響を及ぼすことがありますので、事業利用分量配当を行う場合には注意が必要です。

3.協同組合の税務

1.組合税務
(ア) 税率等の比較


①法人税

法人税率組合等中小企業
所得800万円以下15%15%
800万円超 19%23.9%

②事業税

事業税率組合等中小企業
所得400万円以下3.4%3.4%
400万超
800万円以下
4.6%5.1%
800万超6.7%


③中間申告

組合等中小企業
法人税不要必要
消費税必要必要
都道府県民税・事業税不要必要
市民税不要必要

(イ) 事業利用分量配当の税務

利用分量配当の損金算入 一定要件のもと
 決算終了後での
 事業手数料返還
 組合は損金扱い・組合員は仕入割戻(収益)計上


(ウ) 賦課金の仮受処理の税務

 賦課金の仮受処理 賦課金の対象を教育情報賦課金に限定
 総会での決議(区分経理)
 1年間だけ繰延べ

(エ) 貸倒引当金の税務

貸倒引当金の特例繰入限度額の割増(12%)

(オ) 加入金の税務

加入金の益金不算入 持分払戻が全額…適用あり
 持分払戻が出資額限度…適用なし

(カ) 賦課金の消費税

賦課金の消費税 通常の賦課金:対象外
 賦課金の内容が購読料や受講料等:課税
 組合員への通知、処理の統一

(キ) 印紙税の特例

印紙税の非課税 組合と組合員間での受取書
 定款、出資証券の非課税

(ク) 固定資産税の特例

 固定資産税の非課税、減免 組合が所有し、かつ、使用する事務所及び倉庫の建物
 一定の機械装置の課税標準の特例

4.組合管理のポイント


①組合と事業会社の違い
組合は営利を目的とした会社と異なり組合員の相互扶助を目的とし、根拠法も会社法ではなく中小企業等協同組合法という法律に準拠しています。
一見似ているように見える会社と組合、しかし、根本的な精神が異なるため、その違いを理解しないと後々大きな問題が発生する可能性もあります。
組合執行部、事務局はもちろんのこと、組合員や顧問専門家も組合に関する知識は不可欠であると言えます。

②組合会計に求められるもの
組合はお互い利益が相反する事業者の集まりです。そのため、組合会計はオーナー企業によく見受けられる社長のための決算ではなく、上場会社に求められる信頼性・公平性が重要となります。
また、近年の異業種組合の増加、共同事業の多様化に伴い監事の役割も相対的に重要性が高まっていると言えます。法律面においても平成19年度の中協法改正により監事の権限が強化されました。監事の役割は監査報告書に押印することだけではありません。

③組合員との取引
組合では、仲間意識もあってか売掛金や受取手形のサイトを安易に延長するといったケースも見受けられます。こうした行為は組合の資金繰りを著しく悪化させ、結果として組合員全員に大きなリスクを負わせることになりますから厳に慎まなければなりません。

5.平成31年税制改正の影響

平成30年12月発表になった税制改正大綱をまとめました。

顧問先様には順次ご説明させていただいております。